既製品を、使わない。
この家をつくるとき、ひとつの約束を決めました。──出来合いのもので、済ませない。床も、柱も、建具も。どこかの誰かの手が、一手間をかけたものだけを。作り手の顔が見える家に、と。そして、なるべく地元の、ご縁のつながりを大切に。
島の手で、島にゆかりがあるもの、ゆかりがある人に。
島の手で、建てる。
施工は、建築工房おおやまさん。直島で、唯一の工務店です。島を知る人が、島の家を建てる。──なるべく、地元のご縁のつながりを大切に。その積み重ねが、この家の芯になっています。
左官の手が、生んだ壁。
壁は、漆喰。左官職人が、鏝で仕上げました。「春風」と「刷毛引き」、二種類の塗り。その強弱を、何度も、何度も調節して──光がまわったとき、室内がいちばん美しく見えるように。壁は、ふたつと同じものがありません。
土地に根ざした、栓の木。
栓の木は、地元の木材屋さんから。山一木材の三代目、熊谷有記さんの手を通って。遠くの銘木ではなく、この土地の木を。どこで育ち、誰の手を通ってきたか──来歴のわかる素材だけを、選んでいます。
胡桃の木を、浮造りに。
床は、胡桃の木。職人が一枚ずつ、浮造りをかけました。やわらかな部分を削り、木目を浮かせる──古くからの手仕事です。裸足でふれると、木目の起伏が足の裏に伝わる。使うほど、艶やかに、深くなっていきます。
ひとつずつ、手をかけて。
同じものは、ひとつもありません。すべてに、誰かの一手間が宿っています。だからこの家は、言葉より先に、手ざわりで、あなたに語りかけてくる。
手をかけたものは、手ざわりでわかる。どうぞ、素手、素足で、ふれてみてください。