既製品を、使わない。

この家をつくるとき、ひとつの約束を決めました。──出来合いのもので、済ませない。床も、柱も、建具も。どこかの誰かの手が、一手間をかけたものだけを。作り手の顔が見える家に、と。そして、なるべく地元の、ご縁のつながりを大切に。

島の手で、島にゆかりがあるもの、ゆかりがある人に。

青空の下、姿を現していくSumuの外観

島の手で、建てる。

施工は、建築工房おおやまさん。直島で、唯一の工務店です。島を知る人が、島の家を建てる。──なるべく、地元のご縁のつながりを大切に。その積み重ねが、この家の芯になっています。

足場に包まれ、建ち上がっていく直島の古民家

焼杉(やきすぎ)の外壁を張る職人

左官の手が、生んだ壁。

壁は、漆喰。左官職人が、鏝で仕上げました。「春風」と「刷毛引き」、二種類の塗り。その強弱を、何度も、何度も調節して──光がまわったとき、室内がいちばん美しく見えるように。壁は、ふたつと同じものがありません。

赤い鏝で、漆喰の壁を塗り上げる左官職人

職人が仕上げた漆喰の白壁に包まれた、広間のLDK

土地に根ざした、栓の木。

栓の木は、地元の木材屋さんから。山一木材の三代目、熊谷有記さんの手を通って。遠くの銘木ではなく、この土地の木を。どこで育ち、誰の手を通ってきたか──来歴のわかる素材だけを、選んでいます。

食卓の一枚板も、栓の木。山一木材 三代目・熊谷有記さんに見立てていただいた、こだわりの一枚です。

山一木材の熊谷さんが見立てた、栓の一枚板テーブル(夜のダイニング)

胡桃の木を、浮造りに。

床は、胡桃の木。職人が一枚ずつ、浮造りをかけました。やわらかな部分を削り、木目を浮かせる──古くからの手仕事です。裸足でふれると、木目の起伏が足の裏に伝わる。使うほど、艶やかに、深くなっていきます。

胡桃の無垢床が延びる回廊と、中庭への抜け

ひとつずつ、手をかけて。

同じものは、ひとつもありません。すべてに、誰かの一手間が宿っています。だからこの家は、言葉より先に、手ざわりで、あなたに語りかけてくる。

庭に槙(まき)の木を植える、二人の庭師

スライド丸ノコで木材を刻む、麦わら帽子の大工

庭も、手で。

庭も、既製のかたちではありません。岡山の庭師が、石を据え、槙(まき)を植え、苔を寝かせる。石と、苔と、一本の槙。槙は、常緑の葉を絶やさぬ、縁起の良い木。「誠実」、そして「色あせぬ恋」を宿すといわれます。この土地の風に合わせて、ひとつずつ。時間をかけて、島に馴染んでいく庭です。

石庭に槙の根鉢を据える、造園の手仕事

仕上がった苔と石の庭を眺める、職人の後ろ姿

手をかけたものは、手ざわりでわかる。どうぞ、素手、素足で、ふれてみてください。

暖簾は、海の波と、島の風。

玄関に掛かる藍の暖簾。ロゴの曲線を活かし、海の波と島の風を描いた草木染

玄関に掛かる藍の暖簾は、直島・本村の家々の軒先を彩る「なおしまのれんプロジェクト」で知られる、ひのき草木染織工房(岡山県真庭市勝山)の染織家・加納容子さんと娘の一穂さんに依頼し、Sumuのために一からつくっていただいたものです。

麻の生平(きびら)に、草木染の藍。Sumuのロゴの曲線を活かして、瀬戸内の海の波と、島を渡る風を描きました。三枚に分かれた布が風に揺れるたび、波の形が少しずつ変わります。

家プロジェクトの集落で、五十軒を超える家々の物語を暖簾に染めてきた作家の手仕事。その一枚が、この家の入口で、お客さまをお迎えします。

参考:ひのき草木染織工房/ベネッセアートサイト直島「直島のれんプロジェクト」